犬との生活
動物は好きだったが、これまで飼ったことがなく、毎日の散歩が必要な犬を飼うのは無理だと諦めていた。しかし、縁があって、あれよあれよという間に生まれて初めて犬を飼うことになった。
事前に経験者から聞かされていた苦労話を大げさだなと思って聞いていたら、全て真実だった。
玄関を開けると噛みちぎった大切な手袋が散乱し、家具の脚は齧られてぼろぼろ、野太い声で鳴くので安眠は妨げられる、雨が振っても槍が振って散歩は絶対!目につくものを何でも飲み込むので乾燥剤や輪ゴムを飲み込んだ犬を抱えて夜中に空いている動物病院を何度探してまわったか、毎日ブラッシングが必要、そればかりか、歯磨きまで必要、マジ?!
こんなに手間がかかるとは、とめまいがした。
でも、不思議に飼わなければよかったと後悔した事は1度もない。
柔らかくて温かくて鼻がいつも濡れていて、トイレにも風呂場にもストーカーのようについてまわって、ほんの15分のの留守にも全力でじゃれついて尻尾ちぎらんばかりにふりふり、朝は顔に飛び乗って臭いお尻をこっちに向けながら全ての油分を舐めとる勢いで顔を舐め回す不思議な生き物。
くっつきたい時はくっつき、近寄りたくない人からは逃げ、残酷なほど正直で、心と行動が完全一致してる。忖度も駆け引きもないドストレートな世界を生きてる。
うちに来てくれて本当にありがとう、君のおかげで人生が何倍も鮮やかになったよ。
ただ、こっちが出かけようとしてる時に限って狙い済ましたような進路にそっとおしっこするのはやめてくれ。
