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クライアントのまなざし

クライアントのまなざし

一緒に仕事をしてきた担当者から仕事の相談ではなく、はじめて人生相談を受けた。内容は今後の進路について。
その人に役に立つような明快なアドバイスは何も浮かばない。
それでも自分の家族や友人の経験を話して、メールを送った。

仕事を通じて知り合った人というのは不思議な関係だ。
友達ではない、しかし、決して単なる仕事上の案件だけの付き合いではない。
時に性別や年齢を超えて、友達よりも深く繋がっている同志のように感じる時がある。

数年前のことだが、検診に引っかかり、なんだか深刻そうな状況になって、落ち込んでいたことがあった。
先のことが見えないので、セミナーの依頼も断ったところ、セミナーを主催していた会社の担当者がほんの少しの時間でいいのでと事務所にやってきた。
てっきり仕事のことだと思っていたら、これまでに私が実施したセミナーの受講者からの感想と言って、1通のメールを印字したものを渡された。そこには、『自分はもう定年退職するので、今後は企業向けセミナーを受けることもないので、DMは送らないでほしい。なお、今までで1番印象に残ったセミナーは〇〇である」という文章が記載されていた。〇〇は私が数年前に実施した不動産セミナーだった。
その担当者は「退職する人から何年も前のセミナーに対してこういう感想をもらえるのは貴重ですよ」と短く言ってさっと立ち去っていった。そこに何よりものエールを感じて、冷えていた体に体温が戻ったような気がした。

今回の私の回答は相手にどんなふうに届いただろうか。誰よりも熱心に仕事に打ち込み、曲がったことが嫌いな、情に厚いその人が、良い仕事をした後、満面の笑みでビールグラスを掲げてるあの表情がみたい。頑張れ、頑張れ