ダイアリー

新プロジェクトXを見て

NHKで放映された新プロジェクトX、今回の特集は、渋谷駅100年に一度の大工事と銘打って、東急東横線の地下化から始まる渋谷駅の大改良工事の模様だった。 
様々な鉄道事業者の案件に関わることが多いうちの事務所にとってはまさに仕事に直結するテーマで、時間が経つのも忘れて引き込まれた。

東急東横線の地下化、東急東横線東館・中央館の解体、銀座線の移動、JR山手線ホームの移設といったおよそ実現不可能と言われた壮大なプロジェクトを果敢に遂行した東急、JR東日本、東京メトロの各社担当者がスタジオにも集まり、当時を振り返って話していた。その中には仕事でご一緒したお顔もあり、堂々とメインで話をされていて、こんなにすごい人だったんだと嬉しかった。

渋谷駅100年に1度の大工事は、白石さんという東急マンの熱意から始まる。誰しもが入り組んで迷路のようになっている渋谷駅の改良工事の必要性は分かっているものの、その途方もない困難さから、口火が切れない。誰しも会社を背負っているので、軽はずみなことは言えないのは当然だ。鎮痛な膠着ムードに陥るのかと思いきや、東急マンの白石さんが自分のところがまず身を切って、東横線地下化、東急百貨店を解体を遂行するから、各社みんなで鉄道マンの誇りをかけて100年に1度の駅の大工事を実現しようと言って火をつける。

その姿は文句なしにカッコ良かった。白石さんは交渉もうまく、言葉だけでなく、心ごとぶつかり説得していく。飲みながら話し、畳みかけ、その徹底的な粘りと情熱が徐々に他の担当者の心にも火をつけ、会社の垣根が取り払われ、皆がワンチームになっていく、まさしく奇跡の物語だ。しかし、こういう奇跡が起こらないと、100年に1度の大工事など到底、実現できない。

その立役者の白石さんが、難航を極めた東急東横店東館中央館の解体工事が終わった後に病で亡くなってしまう。番組を見た当初、なぜスタジオに白石さんがいないのかと嫌な予感がしたが、そういうことだったのかと衝撃を受けた。
皆がその早すぎる死を悼む中、クールで表情を崩さずにインタビューに応えていたメトロの担当者の方が、白石さんのことを話すときに、目が静かに静かに充血していった。どんな言葉よりもその死を悲しみ悔しく思う気持ちが画面から溢れて出ていた。

最後に、白石さんの命日に皆でお墓参りに訪れている映像が流れる。しんみり故人を悼むのではなく、お墓にお水をかけながら白石さんは今頃こう思ってるよと皆で軽口を叩いて笑い合ってる。
この人たちが、どんなふうに力合わせて修羅場を乗り越えてきたか、どんなふうに信頼しあっているかということがこのシーンだけで、伝わってきた。白石さんが言うなら仕方ないよな、一旗脱ぐしかねぇなと覚悟を決めて腹に力を入れて、戦ってきた歴史が伝わってきた。

そして、今、自分が現在進行形で、渋谷駅の開発や鉄道の仕事に関われていることが改めて幸せだなと思った。
法律だけを見てできないと逃げ込むのではなく、社会がそれを必要としている以上、この番組に出てくる人たちのように食らいついて突破口を見つけてやるというファイトが湧いてくる番組だった。