ダイアリー

飛び立っていったメンバー

小田和正の昔からのファンで、今日、大阪城ホールでのコンサートに出かけた。あの他の誰にもない透き通るうつくしい声と息のあったバンドが作りあげるサウンドに包まれ、幸せな2時間を過ごした。
コンサートのクライマックスの1つが小田さんがピアノの弾き語りで歌い上げる「言葉にできない」。

オフコースの重要メンバーが脱退することになり、バンドの存続や将来についていろいろな葛藤があったときに作られた曲と言われていて、なるほどそう思って聴くと、単なる恋愛の別れの歌ではなく、仲間との道行きの別れの歌のように聴こえてくる。
光風事務所も、創設以来、たくさんのメンバーとの出会いと別れを経験してきたので余計にそう感じる。

そしてこの歌の歌詞はなんとも不思議なのだ。
冒頭は
「終わるはずのない愛が途絶えた」
と誰よりも信頼していた相手との愛が突然終わってしまったという信じがたい気持ち、身の切られるような痛切な思いが伝わってくる。
「悲しくて、悲しくて言葉にできない」
続いて、悲しみが深すぎて、言葉にすらできない状況が胸に迫ってくる。
 これは典型的な別れの歌だと思って目を瞑って聴きいっていると、
「あなたに会えて、本当によかった」「嬉しくて、言葉にできない」という歌詞が飛び込んできて、混乱する。悲しくて言葉にできないはずが、なぜ、嬉しくて言葉にできないになるのだろう?中学生のころ、初めてこの歌を聴いた時は訳が分からなかった。誰かと別れた後に、また愛する人に新たに出会ってその人に向けて歌ってる歌詞なのかと思っていた。

 しかし、先日、コンサートでこの曲を聴いて
最後の「あなたに会えて本当によかった」という言葉を聴いて、ちがう!これは去っていった相手に向けられた歌なんだと閃くように感じた。
 
 私も上手に別れられたことばかりではない。時にお互い傷の残るような別れを経験したときも、時間というフィルターによって様々な感情が濾過された後に残るのは、あの人に出会えて良かったという感謝と思い出だ。
 あの人にあそこで出会えたから今の自分がある、今の事務所があると後になるとよくわかる。
 去っていったメンバーの中にはいまだに濃い付き合いが続いてる人も、世界が離れてすっかり疎遠になってしまった人もいるが、昔のファイルを整理しているとその面影がふっと香るように立ち上ってくることがある。
 一緒に笑い、一緒に汗をかき、真剣にぶつかり、そのエネルギーを事務所のために全力で燃やしてくれたことがかけがえがなく、もうあの時間はニ度と戻らないんだな、なんて貴重な輝かしい時間だったんだろうと思う。
 今いるメンバーはもちろんのこと、袂を分かち去っていったメンバーにも支えられて続けてきたことを思い出させてくれた素敵なコンサートだった。

(2020年 宮古島事務所旅行の時のメンバー)