ダイアリー

顧問契約の終了

あるクライアントが、本社のある九州から常務がわざわざ社長のお手紙を携えて、顧問契約終了を伝えに上京し、事務所に来てくれた。前々から会社の財務状況が相当厳しいことは聞いていたし、顧問終了は仕方がないと思っていたところがあった。

確かに常務のご説明でも、社長のお手紙でも、ありとあらゆるコストカットを実施している状況からも、我々を顧問として抱えている場合じゃないので仕方ないという思いは改めて強くなった。しかし同時に、よくよく常務のお話を聞くと、別の地元の顧問の先生には、労務案件を中心に相談していてそちらとの顧問契約は継続している。我々の専門分野である普通借家テナントの法律問題も発生しているものの、現場の担当者が「こんなことを東京の弁護士に聞いて良いのか」という躊躇や距離感があり、それが同じく受動的で相談を待つという姿勢の我々と悪い意味でかみ合ってしまったということがわかってきた。もし相談がしばらくない段階で、例えばこちらからオンラインでの法律相談会を持ち掛けていれば、現場から実は‥と色々な相談があったはずだし、そういった積極的なアクションをとっていればこのタイミングで顧問終了という話はなかったということを、痛感した。

この会社とは、2年前に大きな法律問題が発生し、常務や他の担当者と二人三脚で全力で当たり、解決できた経緯がある。この案件を通じて光風を心から信頼してくれていたことが伝わり、常務自身も顧問の継続に尽力したものの結論は変わらず、本当に申し訳なさそうに「力及ばず…」と謝っておられた様子を見て、これだけの思いと苦労をして締結した顧問契約を、このような形で失ったという事実に初めて直面し、なんとも情けない、苦しい気持ちになり、その後の会食の席でもしばらく料理の味がわからなかった。我々がもっともっと役に立てる場面があったはずなのに、事務所の価値を出し切れなかった。

 相談を待つのではなく、こちらから積極的に働きかけ、提案をすることの重要性が今回のことで腑に染みた。